「LDは勉強しても無理ですか?」という検索があったので、私の考えを書くことにしました。

学習障害や軽度知的障害はかなりデリケートな問題なので、単なる塾講師が勝手な思い込みで触れてはいけないことなのは重々承知しています。

しかし、どれだけ努力をしても周りについていくことが難しい子が現実にいます。

そのような子に受験勉強を強要しては、「自分は何をやっても人と同じようにできない」と自尊感情を失わしてしまう可能性がないとも言えません。

それを考えると、果たして受験勉強をさせることがその子のためになるのか疑問です。

もちろん、子供の教育をどのようにするのかは親が決めることで他人が決めることではありません。

「もしかしたら、勉強のやり方が悪いだけで、まともな指導者に逢えば成績が伸びるかもしれない」と考え、いろいろな塾を探し回ることを否定することもできません。

ただ、私は塾講師として勉強をどれだけしてもできない子(これが私の指導力不足のだと言われても、それを否定することはできません)を見てきた経験から、「受験勉強がすべてではない」という考えを親が持つことも大切だと思っています。

ただ一つ

本人が頑張ってみたい

という場合は

その気持ちを尊重させてあげることは大切だと思います。

参考:学習障害(LD)

 

見た目ではわかりにくい

すでに専門機関に相談し検査を受けているのであれば、検査結果で分野ごとの数値を知り、学習障害・軽度知的障害がどういうものなのかを理解しているはずです。

検査を受けている時点で、ネットで学習障害や軽度知的障害について検索をする段階ではなくなっているはずなので「どうすれば勉強ができるようになるか」「どれだけ勉強をしても点数が伸びないのは学習障害が原因か」といった類の検索をすることはあまり考えられません。

ですので、このページを見ているのは「勉強をしても子供の成績がなかなか伸びない。どうしても伸ばしてあげたい」「学習障害や軽度知的障害の可能性があるかもしれないと不安に思っているが、それから目をそらし、周りよりも成績を良くしたい、せめて平均点でもとらせたい」と思っている方の可能性が高いはずです。

そこで、学習障害・軽度知的障害は外見からは気づきにくいことがあるということを知ってもらいたく、「見た目ではわかりにくい」をはじめに書かせてもらいました。

親が様子を見る

気づきにくいからこそ、親は子供の様子をしっかりと見る必要があります。

周りよりも絶対に努力をしているのに学校の定期テストで平均点が取れないという場合、「勉強のやり方は間違えていないか」、「勉強をしているふりをするだけで実はほとんど集中していないだけではないか」を見てください。

もしそうだとすれば、勉強時間の割りに成績が悪いのはそれが原因である可能性が高いです。

しかし、勉強時間はそれなりに確保し、かつ、正しい勉強の仕方をしているにもかかわらずテストで平均点以下しか取れないのであれば、学習障害・軽度知的障害の可能性も考える必要があると思います。

その場合、学校の先生や塾の先生に "学習の困難さ" がどの程度なのかを聞いてみてください。

そして、困難の原因が本人の努力不足でない可能性があると思えた場合、スクールカウンセラーや発達障害支援センターなど専門知識を持った人に相談をしてみてください。

ここまで読んだ時点で、何も知らないやつが勝手なことを書くなと思われた方もいると思います。

しかし、「できないものはできない」と考え、勉強以外の道を探してあげることのほうが、子供のためになる場合もあると私は思っています。

私の考えに否定的に思われた方でこれ以降も読まれる場合、「異なる考え方を持った人もいるんだ」という目で読んでもらえると助かります。

参考:成績は個人差がある

“できること” “できないこと”を知る

勉強が極端に苦手な場合、自分が何ができて何ができないのかを知ることが大切だと思います。

かなり前に私が教えていた生徒に

「私は何もできない。バカだから。」

と泣きながら言われたことがあります。

この言葉を聞いたときは、その場で私も涙を抑えるのに必死になりました。

確かにその子は、暗記をするのにかなり苦労をしていました。

しかし、全く暗記ができないわけではありませんでした。

体験入塾の時に暗記ができるかどうかの確認をして普通に暗記ができていましたし

解説した内容を理解できていたので

その子が勉強が極端に苦手かもしれないということに

しばらくの間気付くことができませんでした。

「もしかしたらこの子は?」と思うようになってから

宿題を出したことを思い出すと

「あの量の英単語を暗記するのにどれだけ苦労をしたのか」

本当になんてことをしてしまったのかと自分に苛立ちを覚えました。

その子は短期間であれば

英単語を覚えることができたし(私が初めて宿題を出したときは寝る時間も惜しんで努力をしていたはずです)、

一定数は長期的に覚えることができたのですが

多くをすぐに忘れてしまっていました。

また、暗記に苦労をする以上に

覚えたことを掛け合わせて問題に対応することが苦手でもありました。

つまり、

全く同じ問題が出されたら点数は取れるけれど

少し質問の仕方を変えると全くできなかったのです。

定期テストでは平均点以上をとれる科目がいくつかあるのに

実力テストになると全ての科目が2割取れなくなるといった状況でした。

でも、どうでしょう?

その子は決してバカではありません。

特定のことに力が発揮できないだけなんです。

そうならば、出来ることを伸ばすことに力を入れればいいと思うのです。

学校の勉強などできなくても、大人になってからはほとんど関係ありません。

計算が出来ないなら電卓を使えばいいですし

英語が難しいと思うなら英語など不要なところに就職をすればいいのです。

学校の勉強に固執する必要などないのです。

もちろん

努力をしなくていい

と言っているわけではありません。

自分の能力を伸ばす努力はするけど、

「出来ないところは出来ないんだから仕方がないよね」

という感覚を持ってもらいたいんです。

みんなが同じでなければならないなんてことはないんです。

「絶対に覚えなくてはならない!!」

「絶対にやらなくてはならない!!」

そんなことはないんです。

「絶対に~」という言葉は子供を追い込むだけです。

なぜそこまでして学校の成績にこだわる必要があるのでしょうか?

学校の勉強なんてクソくらえという考えに変え

「出来ることを伸ばしてあげる」と考えたほうが

子どもにとっても親にとっても良い方向に進むように私は思えます。

自分なりのやり方をみつける

勉強なんかさせるよりもできることを見つけてあげる

と書いた上の内容とは矛盾しますが

成長とともに勉強ができるようになることは普通にあります。

どれだけ覚えようとしても何も覚えられない状況から

少しずつ暗記ができるようになり

テストの点数もUPする

今までの常識を捨てて自分なりの勉強法を見つけ出してみてください。

学校で習うスピードが速すぎるのであれば、自分なりのペースでゆっくりと勉強をしてみてください。

発達障害の理解を広めてきた上野一彦さんは次のように言っています。

できるのに時間がかかる」または「違うやり方が必要になるだけ

私の元教え子の中にも入塾当初

英単語の暗記がかなり苦手な子がいました。

その子が学習障害の傾向があるかどうかは別とし

一緒に単語の覚え方を考えたことでかなりの単語を書けるようになりました。

綴りを間違えることは治りませんでしたが

定期テストやフクト(福岡県の多くの中学生が受ける実力テスト)で普通に平均点以上が取れるようになりました。

私はその子に

「綴りを覚えるのが苦手なら意味だけでもいいから覚えなさい。英単語を書かせる問題が出て来たら、間違えても構わない。どうせ、ほとんどの問題が選択問題だったり、和訳だったり、並び替え問題だったりするんだから、綴りを中途半端にしか覚えていなくても、意味さえ分かっていれば問題は解ける」

と入塾してから数か月はかなりの頻度で伝えていたと記憶しています。

綴りミスで問題を間違えたときに

他でカバーして点数が取れればいいという気持ちがあれば

単語を覚えられないことをそこまで気にしなくなります。

無理な英単語の暗記もしなくなるので

他の科目の勉強に力を注ぐこともできます。

期待しすぎない

学習障害も軽度知的障害もできるものできないものにバラつきがあります。

ほとんどの科目は平均点が取れるのに

特定の科目だけ極端にできないということも起こりえます。

何もできないわけではなく努力によっては定期テストで平均点前後が取れることも普通にあると思います。

なので、「他の科目ができるんだから、苦手にしている科目だってやればできるからもっと勉強しなさい。成績が伸びないのはあなたが勉強をしていないだけ」「もっと頑張れば絶対にもっとできるようになるはず」と期待してしまいがちです。

しかし、無理な期待は本人のためにならないと私は思っています。

無理やり英単語や漢字の暗記をさせても数日後には覚えた内容のほぼすべてを忘れる。

そのようなことが繰り返されたら、「自分は覚えてもすぐに忘れる。なんで周りのやつらと同じように覚えられないんだ。自分は何もできない人間なんだ。」と自尊心を傷つける危険性があります。

できる範囲で本人に努力をさせ、「自分でもやればできることはある」と思わせることを大事にしてください。