
子どもが3・4歳くらいになると、多くの親御さんは「英語を早く習わせたほうがいいのではないか」と一度は頭をよぎると思います。
この本は、そのように考えたことのある親御さんにこそ、ぜひ読んでもらいたい一冊です。
赤ちゃんは簡単に言語を扱えるようになっているわけではない
結論から言うと、英語の早期教育はほとんどの場合「意味がない」ばかりか、無理に進めれば「母語の理解にさえ弊害が起こるかもしれない」と、私は本書を読んで強く感じました。そう思うのは、第一章を読むと、赤ちゃんが決して楽をして言葉を学んでいるわけではなく、一歩ずつ時間をかけて言葉を身につけていく様子がよくわかるからです。
大人のように「これは日本語で言うところの〇〇だ」という知識が一切ない赤ちゃんは、真っ白な状態から、膨大な情報の断片を自力でつなぎ合わせてルールを見つけ出すしかありません。決して、時間が経てば勝手に言葉が身につくような楽な話ではないのです。
それなのに周囲から楽をしているように見えるのは、赤ちゃんが日常のあらゆる瞬間を費やして、必死に周囲を観察し、試行錯誤している努力を、大人が気付いていないからにすぎません。母語ですらこれほどのエネルギーを注いでようやく獲得できるものなのに、母語以外の言語にまで無理に時間を費やそうとすれば、本来大切にすべき母語を育てるための時間や成長の機会を奪ってしまいます。
本書では、そうして無理に二つの言語を学ぼうとした結果、下手をすればどちらの言語も上手に扱えなくなり、母語の習得にまで悪影響が及ぶかもしれないというリスクが指摘されています。
外国語を学ぶ最適な時期
本書によると、赤ちゃんにとって意味があるのは、あくまで「生身の人間」から発せられる言葉だそうです。相手とのコミュニケーションを楽しむなかで、それを「必要な音」だと認識することで、正確に聞き分けられるようになると述べられています。
この内容は、私自身も「おそらくそうではないか」と感じていた部分でしたが、本書で具体的な根拠が示されたことで、長年のもやもやが晴れてすっきりした思いです。
また、言語の習得スピードについても興味深いデータが紹介されています。意外だと思うかもしれませんが、小学校に入る前の子供よりも、それより年上の子供の方が習得が速いケースが多いとのことです。
著者の「早ければよいわけではない」という主張を裏付けるものとして、海外現地で学ぶ子供たちの事例も挙げられています。それによると、低年齢で移住した子は英語こそネイティブ並みになるものの、一方で母語である日本語の力が低下してしまうという課題があるようです。対照的に、10歳以上になってから移住した子は日本語をある程度保てているという話からも、この主張には非常に説得力を感じました。
ここまでの内容をふまえると、ただ漫然と英語の音源を流し続けるだけで言葉が身につくほど、習得の道は甘くないのだと改めて痛感します。むしろ、ある程度の年齢に達してから「学びたい」という本人の強い意志を持って向き合わなければ、せっかくの学習もほとんど意味をなさない。そうした厳密な事実を突きつけられる内容でした。











