インフルエンザ罹患などの理由で公立高校入試を受けられなかった受験生に、追試を行う自治体が全国的に増えている。

そのようなことが西日本新聞の一面に書いてありました。

※ 「インフルエンザになったら受験できない」という不安を持っている人がいると思います。体調次第ではありますが、別室受験はできるはずです。早めに中学の先生に連絡を取り、高校に適切な対処をしてもらってください。

    経緯

    この追試が広まり始めたのはつい最近で、2016年2月の神奈川県の男子生徒がインフルエンザにかかり別室で受験をし、その後に母親と生徒が無理心中を図り自死した事案があったからだそうです。

    17年度

    17年度入試(去年)には全都道府県・政令市のうち以下の9府県市が追試を実施し、少なくとも計200人が受験したとのことです。

    • 秋田
    • 静岡
    • 三重
    • 京都
    • 和歌山
    • 徳島

    市立で実施するは京都・静岡・浜松

    18年度

    本年度に導入するところは以下の通り

    • 東京
    • 神奈川
    • 新潟
    • 福井
    • 山梨
    • 愛知
    • 大阪
    • 広島
    • 高知
    • 福岡
    • 長崎

    市立で実施するのは大阪・名古屋・横浜・北九州・川崎・福岡・広島・堺・新潟

    九州の追試

    九州では本年度入試(2018.3)から福岡と長崎で追試が行われます。

    長崎県は本試験と同様に5教科の学力テスト(時間は短縮)と面接を実施し、通常試験と同様の学力が図れる問題が作成されるみたいです。

    福岡県は、定員割れの高校が実施している補充募集の日に合わせて追試が行われることが決まっています。

    5教科のテストを課すのは採点などが追いつかないとして、面接・小論文で合否を決めるみたいです。

    本試験と異なる内容だが、福岡県の教委が「追試の受験生は、これまでの勉強の蓄積で臨んでほしい」としている、と新聞にありました。

    小論文が5教科の勉強と同じわけがないのに、これまでの勉強の蓄積で臨むって…どういうことでしょうか。

    追試は必要なのか

    入試本番だけで合否が決まるのは不公平だということで内申点を重視する傾向になったのだから、さらに公平性を求め追試をする必要があるのか疑問です。

    インフルエンザに罹るかどうかは、各人の体調管理も影響します。

    うがい手洗いなどをせず、また、睡眠不足などで病気になりやすい体質になっている人がインフルエンザに罹ったとすれば、それは自己責任です。

    そのような人に「インフルエンザになって神奈川県と同じような事案が起こったら困るので追試をする」ということが、公平なのでしょうか。

    体調管理をしていた人にとって不公平としか思えません。

    もちろん体調管理をしっかりしている人も罹患することはありますが、そもそも、すべての人に公平である試験などありません。

    完璧な公平などないのに、公平を追求するとかえって不公平になることもあるのではないでしょうか。

    仮に一般入試で受験した人が不合格になり、追試を受けた人が合格したとします。

    そこで、不合格になった人が「あ~、自分も追試だったら合格したはず。もうだめだ。」といって神奈川県の事案と同じことが起こる可能性もあります。

    そのときはどのように対応するのでしょうか。

    不合格になったら同じことになるかもしれないといって、受験生全員を合格させるのでしょうか?

    福岡県の追試の公平性

    追試そのものの不公平さはあるものの、実施が確定したので何を言っても変わりません。

    しかし、公平のために実施するといっている追試制度なのに、公平性の確保ができていないことにも触れずにはいられません。

    5教科を受けるのと、面接と小論文で決めるって、どのように公平性が図れるのでしょうか。

    「採点が追いつかない」とありますが、インフルエンザが仮に流行っていたとしても、追試を受ける生徒がどれくらいいるのでしょうか?

    数名、多くても10数名くらいではないでしょうか。

    その程度の人数の採点をするのに1日もかかるでしょうか。

    ただ単に、追試問題を作成するのが面倒なのではないでしょうか。

    他県ができるのに福岡県ができないということはないはずです。

    「追試問題を作ったら作ったで、『通常日の試験問題と難易度が異なるから公平性が欠ける』と言われるのだから、面倒なことをせずに小論文でいいだろ」と結論付けたのでしょうか。

    入試に完全な公平性などないと誰もが分かっています(グチグチ言うのは自分の思い通りの結果にならないと不満を持つクレーマーだけ)。

    明らかに公平じゃないのに「追試でも公平性は保たれる」と言われると「おいおい、それには無理があるだろう」と言いたくなります。

    「公平性が100%あるとは言えないが、こういう制度にしたのだから守ってもらう。インフルエンザになった人にできる最大の配慮」と言われたほうが、まだ納得できます。

    一般入試に影響するか

    追試を受ける人が10名以上いれば多少影響するかもしれません。

    2・3名しか受けないのであれば、ほぼ影響はしないはずです。

    おそらく一般入試は一般入試で合格者を出し、それとは別枠で追試合格者を出すと思われるからです。

    たとえば、定員が440名の高校であれば、一般で440名の合格者を出しておき、それとは別枠で追試合格者を数名出すのです。

    過去の入試結果でも定員よりも1名多く入学するということも見られるので、定員440名のところ442名が入学するということになっても特に問題はないはずです。

    影響の可能性は少ないといっても、一般入試では不合格になる可能性が高い(内申点は高いが実力テストの成績が受験校のレベルに達していない)人にとっては有利になるかもしれません。

    わざとインフルエンザに罹ろうとするということが起こらなければいいですが。

    やるべきことは別にある

    神奈川県の事例をもとに追試を実施することを決めたのであれば、やることは別にあると思います。

    本気で受験勉強を頑張ってきた子が不合格になったら

    • 死にたいくらいつらい
    • 何もしたくない
    • 誰にも会いたくない
    • 第一志望の高校に通えないなら高校にはいかない

    と人生で初めて味わうであろうほどの悔しさを感じるはずです。

    ただ、そこで自死を選ぶでしょうか。

    しばらくは気が沈むでしょうが、新しい目標を見つけて前を向くはずです。

    そして、悔しさが成長の種になるはずです。

    大きな失敗をしたからといって、「人生終わり」「もう駄目だ」と、いつまでもふさぎ込み成長ができないのは心的成長に何らかの問題がある可能性があります。

    また、自死の原因が不合格になったことそのものにあるとは限りません。

    様々な要因が影響し、結果的にそのような方法を選んだということも考えられます。

    なので、「自死を選ぶ人がいる可能性があるから追試を設ける」というのではなく、自死を選ぼうという考えを起こさせないように、悩みを抱えている人が相談ができる仕組みを今以上に充実させるほうがよいと私は思います。

    充実させる方向に進んでいるみたいですが、もう少しスピーディーにできるはずです。

    発達(子育て・教育)