虐待は大きく、①身体、②心理、③性、④ネグレクトの4つに分けられます。
今回は②の心理的虐待、場合によっては①の身体的虐待に分類されるであろう「教育虐待」について触れます。
目次
気付かないうちに虐待?
「教育虐待」という言葉は2010年代中ごろから本で目にするようになりました。
それらの本には、「虐待をしている親は、自分が虐待をしていることに気付かないまま子供を苦しめ続けることが多い」と書かれてあります。
気付かないうちに子供を精神的に追い込むことがないよう、子育てをしている親が「教育虐待」がどういうものなのか、ほんの少しでも知識を持っておくことが役立つかもしれません。
以下、無理なく読める本を2冊。
家庭だけでなく、学校での教育虐待も知りたい方に進める1冊。
教育以外の虐待についてメインに書かれている1冊。
合計4冊を紹介します。
これらの本の1冊でも構わないので、手に取ってもらえれば幸いです。
ただ、注意しなければならないのは
専門家が書いてある本であっても、その著者の偏った視点から自分が都合の良いようにデータなどを解釈することがないとは言えないことです。
この手の本は
そういうこともあるかもしれないね
くらいで読み
すべてを鵜呑みにしないほうがいいと思います。
子どもを攻撃せずにはいられない親
『子どもなら「思い通りに支配できる」大人の自尊心のための道具なのか?』
帯にかなりインパクトのある言葉が書かれています。
この本の対象者は
「親なんか許さなくていい」
「親を許せないと思っている自分をダメなどと思う必要はない」
と
子供の時に親から受けた仕打ちにより、大人になってからも親のことが許せない人へ向けたもののようです。
しかし、著者の意図した対象者はそうかもしれませんが、それ以上に2・3歳~高校生くらいまでの子を持つ親が読むべき本だと私は思いました。
自身が親から教育虐待を受けた精神科医である著者が、自分の体験や出会ってきたクライアントの体験をもとに「教育虐待はこういうものなんだ」ということが分かりやすく書かれています。
取り上げている内容は、価値基準が子供の学業成績に偏っている親が多く、極端な例が多いのですが、
著者やそのクライアントの過去の体験を知ることで、読者自身が客観的に自分を見ることができるはずです。
読みながら「自分が今子供にやっていることって本当に子供のためなんだろうか?」と自問自答をせざるを得なくなるはずです。
勉強をしない我が子を見てイライラしている方
自分の言動が間違っているかもしれないと気づいているのに止められない方
子育て、特に勉強面でなんらかの不安を抱えている方
お勧めです。
ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる⼦どもたち
教育関係の著書を多数出している「おおたとしまさ」さんが書かれた本です。
上で紹介した本は著者が精神科医という立場から書かれてあるので
「親が子供を支配する理由」
「親の教育方針により子供にどのような影響が出るのか」
「精神的に不安定になっている状態をいかにして改善するか」
ということが中心になっていますが
この本はそれと異なり
人が、親にされた教育によってどのような人生を歩んできたのかが書かれています。
一つの読み物として読めるのも特徴です。
初めから終わりまで、難しいことが一切かかれていないので、時間があまりないけれど「教育虐待」がどういうものなのかを最低限知っておきたいという人にお勧めできます。
教育虐待・教育ネグレクト~日本の教育システムと親が抱える問題
著者は発達障害に関連した著書を複数上梓している「古荘純一」さんです。
「教育虐待」について少し深く学びたい人にお勧めします。
- 第1章 教育虐待と教育ネグレクトの概念
- 第2章 被虐待体験を感じやすい子どもたち――自尊感情と精神保健の視点から
- 第3章 家庭教育における教育虐待・教育ネグレクト
- 第4章 学校における教育虐待・教育ネグレクト
- 第5章 支援教育における教育虐待・教育ネグレクト
- 第6章 高等教育と進路・就労指導における問題
- 第7章 対策と課題
目次から分かる通り、家庭だけでなく「学校」「特別支援教育」「高等教育(大学)」といった教育機関で起こっている教育虐待にも焦点を当てています。
上で紹介した二冊と比べたら少し読みにくいと思います。
教育や心理学にある程度関心を持っている人でなければ書いてある内容を理解するのも難しいかもしれません。
ただ、「教育虐待」を深く理解したいと思うのであれば、この本は読んでおくべきだと思います。
第3章に「教育虐待に走りやすい親の特徴」(P95)という項目があるのですが、
その中のに
「子どもの成績がすぐれないことを母親に責任転嫁する父親やその親族からの重圧がある」
「母親が異常に教育熱心である一方で、父親が無関心である」
という特徴が書かれていました。
「プチ虐待」の心理~まじめな親ほどハマる日常の落とし穴
教育に限定しない「虐待」に関する本を最後に紹介しておきます。
著者は臨床心理士の「諸富祥彦」さんです。
上で紹介した本は、すべて教育に関連する「虐待」でしたが、この読者の対象は乳幼児の親が中心になります。
教育に限らず子供を精神的に追い込む言動を知らず知らずのうちにしているかもしれません。
「えっ、これって普通に自分が普段やっていることじゃん」と思うようなことも書かれてあるはずです。
書かれてある内容にギョッとしても、すぐに改善できないこともあるとは思います。
自分が普通にやっていたことが子供の発達に悪影響を与えるかもしれない、と気づくだけでも少しずついい方向に変わってくるはずです。
子どもは親の所有物ではありません。
親の見栄で嫌がる子供に何かをさせることが本当に子供のためになっているのか?
これから数十年で起こるであろう社会構造の変化を無視し、自分の過去の成功体験が絶対に成功をもたらすなど、何も考えずに愚かな親になることはやめましょう。
子どもの発達段階、能力、個性を無視し、学校の成績にこだわりすぎている人が多すぎるような気がします。